ベッドの下

穴があったら入りたい

「虐殺器官」を観た感想 ※ネタバレあり

今回観た「虐殺器官」は伊藤計劃さんのデビュー作である小説が原作の映画で、小説の方も2年くらい前に読んだことがあった。なのでスムーズに内容が入ってきたが、驚きや発見は少なかった。以下、印象に残ったシーンを振り返る。

 

クラブでの語らい

シェパード大尉とルーシャスが教養ありげな会話をしているシーン。ここでの「自由は絶対的なものでなく、選択するものだ」のような発言は、その通りだなと感じた。会社に身を預ける(時間的自由を捨てる)代わりに金銭を得る(ものを買う自由を得る)という話はよく聞く。自己啓発本にもありそうなフレーズだ。「やりたいことがあるなら、やらないことを決めなさい」みたいな。

このクラブに集まっている人達はプライバシーを守り、自由に過ごしたいと思っているようだ。自分もプライバシーを守りたいとは思うが、この世界での便利さや安全のためだったら多少は仕方ないかな、とも思う。なんとなく、このクラブに来ていた人はやましいことがあってばれたくないという人が多そうに感じた。実際、ルツィアは不倫していたし。現実にいる声高にプライバシーを主張し過ぎている人も実はやましいことがあるのではと疑ってしまう。

このシーンだけでなく映画全体に言えることだけど、「貨幣は鋳造された自由である」(ドストエフスキーの言葉らしい)やカフカといった文学の知識が随所に散りばめられているのが、意識高い感じで面白い。まあ、「ヤバい」、「ウケる」だけのような会話は飽きるしつまらないから、色んな知識を使って比喩や引用をするとかは良いよね。自分は楽しくて好きだ。

 

戦闘シーン

暗殺部隊カッケー!ハイテク武器つっよ!

という感想もあるが、「虐殺は視点の違い」、「その殺意は本物か?」などのメッセージがあるように感じた。痛覚マスキングや人工筋肉を利用した兵器もリアリティのある描写がされていてよかった。あれらはすごく便利そう。

下半身がなくなっていても戦い続けていた兵士や薬をキメてる少年兵、圧倒的な強さの無人兵器など、爆音と相まってインパクトが大きいシーンが多かった。

 

ジョン・ポールとの会話

実に多くの示唆が含まれている会話だと思う。「人間は見たいものしかみない」、「身近な製品がどのようにして作られているか知ろうともしない」、「仕事は良心に覆いをするのに最適な言い訳だ」みたいな胸にグサグサ刺さる話がたくさんあった。特に気になったのは良心と虐殺の話。平常時ならば、裏切りや殺人を犯すより協力して生活するほうが遥かにメリットが大きいのだけど、干ばつなどで食料がないといった緊急時は殺人を考える方が生存可能性が高まる、みたいな話だったと思う。そして、良心も虐殺も人間が生き残るために得た適応力として太古から備わっている表裏一体なものだということ。

ジョンの行動は、虐殺で自分の世界を守るというもので、彼の気持ちもわからなくはない。自分も虐殺の文法を手に入れていたら、ジョンと同じことをしたかもしれない。

 

 

色々と考えさせられる映画であり、自分は楽しめた。ただ、いかんせん文章にしようと思ったら上手くまとめられなかった…

 

 

以下余談

ルツィアとの話の中でピジンと出てきて、「ピジンクレオール」を思い出した。高校生の時に国語で習ったのだけど、理解が結構難しかったように思う。今も高校生は習っているのかな?

 

ジョンが雑多なものからパターンを見つける(それによって虐殺の文法を発見した)と言っていたが、それって人工知能の得意分野かな、と思った。もし現在の人工知能の性能がさらに向上したら、虐殺の文法を見つけるのでは…なんて妄想してしまう。

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。拙い文章ですみません。